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船小屋温泉昔話
 

 

 


むかしむかし、船小屋に、重い病気にかかった男がいました。

その男の名は、田吾作(たごさく)といいました。

田吾作は病気で働くこともできず、家は貧しく、苦しい生活の日々でした。

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そのころ、船小屋には、グツグツと泡立つ血の色をした泉がありました。

その泉の上を低く飛んでいく雀は、バタバタと落ちて死んでしまうのでした。

それで、その泉は雀地獄と呼ばれていました。

そのため、人々は、その泉を恐れて、決して近づこうとしませんでした。

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しかし、思いつめた田吾作は、雀地獄と呼ばれる泉の中に入って、死んでしまおうとしました。

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しばらくすると、冷たい泉の中に入っているのに、なんだか体がポカポカしてきました。

それに、気分がスーっと楽になってくるではないですか。

「あ〜、もう死んでしまったのか。きっと天国が近くなってきたのかな〜?」と思っていました。

そこへ、父親を心配して探していた田吾作の小さな息子が、「おっとー!おっとー!」と泉のほとりで叫んでいるではないですか。

それで、我に返った田吾作は、びっくりしました。

ずっと苦しんでいた病気が、すっかり治っているではないですか。

それから、元気になった田吾作は、一生懸命働いて、その家族は幸せに暮らしたそうです。

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しばらくしてから、偉いお坊さんが、船小屋を通りかかりました。

そのお坊さんは、病気の人々を治療して、各地をまわっていました。

お坊さんが、雀地獄と呼ばれる泉の水を調べると、それが大変体に良い霊泉であることが分かりました。

お坊さんは、この霊泉は大変体に良いので、毎日飲むように人々に教えてあげました。

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それから、船小屋の人々は、この霊泉を飲んで、健康でいられました。

また、霊泉に浴すると病気や怪我が早く治ることも分かり、多くの人が療養に船小屋を訪れるようになりました。

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めでたし、めでたし。

 

(文・絵:村上や)